逆転触媒(詳細説明1,2)とUnlocked卑金属触媒(詳細説明3,4)を統一する概念から、パラダイムシフトにシフトに繋がる大型プロジェクト誕生
学術で最も栄誉ある「〇〇〇〇研究」に採択(2026~2031)
1. 概要
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私たちの暮らしを支えている肥料、燃料、プラスチック、医薬品――その多くは「触媒」と呼ばれる金属の力を使って大量に作られています。工場では、金属触媒を詰めた反応装置の中に原料とエネルギーを投入し、必要な化学製品を生み出しています。しかし、その製造には莫大なエネルギーが必要であり、地球環境への負荷を減らすためにも、このエネルギーをいかに削減するかが大きな課題となっています。
反応装置の大きさには限りがあります。限られた空間の中で、どれだけ速く、どれだけ多くの製品を生み出せるか――それを決めるのが「触媒の体積あたりの合成速度」です。この値が高ければ高いほど、同じ量の製品を、より小さな装置で、より少ないエネルギーで作ることができます。つまり、この指標を高めることが、省エネルギー化の鍵を握っているのです。
驚くべきことに、100年以上前に開発されたハーバー・ボッシュ法では、数十ナノメートルサイズ(メゾスケールと言います)の鉄粒子からなる古典的な触媒が、今なお第一線で活躍しています。そしてこの触媒は、最新の高価な貴金属触媒と比べても、「触媒の体積あたりの合成速度」という点では依然として優れています。これは、触媒科学にまだ大きな可能性が眠っていることを意味しています。
本研究は、その可能性に真正面から挑みます。私たちは、鉄などの安価で豊富な金属からなる数十nmを超える「メゾスケール粒子」に着目します。そして、その表面を精密に設計することで、
・反応を強く後押しする電子の力を高めること
・反応を妨げる要因を取り除くこと
・高温で粒子がくっついて性能が落ちる現象(焼結)を防ぐこと
を同時に実現する新しい学術基盤を築きます。
目指すのは、環境にやさしい条件でも、これまでにない高い生産性を発揮する革新的触媒の創出です。
この成果は、アンモニア合成で知られるハーバー・ボッシュ法だけでなく、ニトリルの水素化や二酸化炭素からジェット燃料やディーゼル、ガソリンを製造するフィッシャー・トロプシュ法といった、燃料や化学品を作る重要なプロセス全体の効率を飛躍的に高める可能性を秘めています。もし実現できれば、世界中の化学産業のエネルギー消費を大きく削減し、人類社会の持続可能な未来に貢献することにつながります。
触媒の小さな粒子の表面を変えることが、地球規模のエネルギー問題に挑む力になる――本研究は、その革新に挑戦します。
2. なぜ、これまで気付けなかったのか?最新触媒構造の死角
現在主流の触媒構造は1930年代に提案された担持金属触媒です。この触媒では数十nmを超えるメゾスケールの高比表面積の担体粒子に、数nmの金属ナノ粒子が固定化されています(図2)。なお、高比表面積とは重量当たりの表面積が大きいことを意味しており、一個の担体粒子は軽いのですが、その体積とは無関係です。

この担持金属触媒構造は貴金属を触媒として使うという点では抜群です。貴金属の使用量を減らし、触媒価格を大きく低減するため、自動車排ガス等の環境浄化触媒のほとんど全ては担持金属触媒です。
それでは、鉄のような安価な卑金属を使う触媒反応ではどうでしょうか。図2には1900年代初頭に設計され、現在もアンモニア製造に使われている古典鉄触媒の電子顕微鏡写真を示しました。図2に示した古典鉄触媒も最新の担持金属触媒も数十nm超えるメゾスケール粒子で、その体積に大きな差はありません。そして反応に使えるのは濃い色の金属部分です。どちらの触媒が表面の金属部が多いでしょうか。
そう、言うまでもありません。古典鉄触媒の体積当たりの表面金属原子数は担持金属触媒を凌駕してしまうのです。実際、アンモニア製造で体積当たりの古典鉄触媒の性能は貴金属を使う最新担持金属触媒を軽く上回ってしまいます。当然と言えば、当然。なぜ、こんなことを私たちは見逃していたのでしょう。はっきり言って謎です。
しかし、この事実は、比較的大きなメゾスケールの卑金属粒子において、表面金属原子の触媒活性を高めることができれば、合成速度/触媒体積が飛躍的に向上することを示唆している。しかし、この「問い」に対して、100年以上も前に設計された古典鉄触媒に勝る「答え」はこれまで出されておらず、NH3合成触媒研究の主流は、担持金属触媒の開発へと移行したという歴史的経緯があります。
この停滞を打ち破ったのが、逆転触媒とUnlocked卑金属触媒の研究です。この2つの研究は、メゾスケールの卑金属粒子にて
・反応を強く後押しする電子の力を高めること
・反応を妨げる要因を取り除くこと
・高温で粒子がくっついて性能が落ちる現象(焼結)を防ぐこと
を実現できれば、多くの重要な化学資源製造で、これまでになく高い触媒性能を発揮できることを実証しました。
この成果を多分野にわたる我が国最高峰の研究者達が認めることによって、本研究は最高位の学術研究として特別な推進を認可されました。